キャリア理論から見たNHK朝ドラ『舞いあがれ!』

NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』が終盤を迎えて面白くなってきました。

 

ネットの感想では、舞ちゃんがパイロットになる夢をかんたんにあきらめたことに対して批判めいたものもあるみたいだけど、なかなかどうして、したたかに今を生きていく舞ちゃんを心から応援したいと思っています。

 

振り返って、舞ちゃんの小さいころを見てみると、体の弱かった舞ちゃんは、おばあちゃんのいる長崎・五島で小学生時代を過ごしていますね。もう、この頃から「越境学習)」を体験しているんですね。

 

越境学習:自分自身の所属やキャリア、これまで慣れ親しんできた考え方などの"境界"を超えて、新しい機会に触れることで学び、自明で暗黙の前提となっていた価値観の変容があること。(石山恒貴教授)

 

長崎・五島からの帰りの飛行機体験で舞ちゃんの夢は飛行機に。大学性になった舞ちゃんは人力飛行機に出会い、「今ここでの気づき」で自分は何をしたいのかを自らに問います。そして、そこでのパイロット経験がきっかけで将来の夢を見つけます。

 

 

今ここでの気づき:体験的な『気づき』を経て、より『自分らしく生きる』ことや、価値観を確立する。パールズのゲシュタルト療法。

 

幼い頃に抱いた飛行機へのあこがれ、人力飛行機のパイロットとして空に浮かんだ経験をもとに、自分が目指すべき将来の夢を想像して、それに向かって羽ばたこうとする舞ちゃん。自分について語るストーリー(ナラティブ・アイデンティティ)がはっきりと見えてきました。

 

*ナラティブ・アイデンティティ:過去と現在と未来の自分についてみずからが語る物語。(マーク・L・サビカス)

 

はっきりと自分のキャリアが見えて、それに向かって着実に進んでいくように見えた舞ちゃんだけど、リーマンショックによって環境が一変してしまいます。お父さんが亡くなり、工場をお母さんが引継ぎ、舞ちゃんもお母さんを助けるために工場に勤めます。

先のことがわからない時代において、その時の環境にあわせてチャンスに変えていく。これはプランドハップンスタンス(計画的偶発性)理論そのものの実践にほかなりませんね。

 

プランドハップンスタンス(計画的偶発性)理論:キャリアというものは偶然の要素によって8割が左右される。 偶然に対してポジティブなスタンスでいる方がキャリアアップにつながるという理論

(3つの要点) 

 ・個人のキャリアの8割が、偶然の出来事に左右される

・偶然の出来事を本人が主体的に活用することで、キャリアアップできる

・偶然を意図的に生み出せるよう行動することが大切である。

 (5つのポイント)

・好奇心 ・持続性 ・柔軟性 ・楽観性 ・冒険心

 

 こうしてみれば、『舞いあがれ!』は、先の読めない今の時代におけるライフキャリアをプランドハップンスタンス理論に基づき、それをうまく描いた作品だと思います。舞ちゃんは、ものの見事にプランドハップンスタンス理論の3つの要点と5つのポイントに当てはまっていると思いませんか?!

 

メインの脚本を書いている桑原亮子さんの経歴を拝見すると、この方もプランドハップンスタンス理論を体現されているようです。いろいろなご苦労をされながら、その時々の状況に対応していかれたようですね。プランドハップンスタンスの5つのポイントをしっかりと持たれているのだと思います。

 

ドラマの最後はどのような展開になるのかはわかりませんが、どんな状況にあっても、その時その時を大切に、しっかりと生きていってほしいと願っています。